桜が咲く、水の上の春 ― 日本観賞魚フェア 2018・ウェルカム水槽制作記録
過去の記録ですが大切な作品の一つなので、投稿します。
2018年4月14日・15日。

東京都江戸川区のタワーホール船堀で開催された「第36回 日本観賞魚フェア」。
全国から選りすぐりの金魚や観賞魚が集まる、日本最大級の観賞魚イベントの入口に、このウェルカム水槽を設置しました。
私が担当したのは、水槽の上部に広がる桜の造形とアーティフィシャルフラワーによる空間演出です。
作品の立ち上げは開催2日前の4月12日。
限られた時間の中で、「春の日本」をテーマに、一つの風景を作り上げました。
ただ花を飾るのではなく、景色を作る
造形美術の世界では、花をたくさん使えば美しくなるわけではありません。
大切なのは、
「どこに視線が集まり」
「どこに流れが生まれ」
「どこに余白を残すか」
です。
この作品では、満開の桜を中央に集めながらも、枝先はあえて空へ向かって伸ばしています。
枝の先端に余白を残すことで、見る人の視線は自然に上へ抜けていきます。
もし全体を花で埋め尽くしていたら、圧迫感のある重たい作品になっていたでしょう。
桜の美しさとは、花そのものだけではなく、その周囲に存在する空気感でもあるからです。
桜が水槽へ流れ込む構成
この作品で最も意識したのは、
「桜の木がそこにある」
ではなく、
「桜の風景が流れている」
という表現でした。
中央で咲き誇る桜から枝が伸び、その流れは右下へ向かって降りていきます。
そして最終的に水槽へと視線が導かれる構成になっています。
人の目は無意識に線を追います。
そのため作品全体の流れを作ることで、
桜
↓
苔
↓
流木
↓
水槽
↓
魚
という一連の物語が生まれます。
これは単なる装飾ではなく、空間デザインの考え方です。
水と桜の対比
桜は一瞬の美しさを象徴します。
一方、水槽の中を泳ぐ魚たちは生命そのものを象徴しています。
儚く散る桜。
静かに生き続ける魚。
その対比があるからこそ、作品に奥行きが生まれます。
特に今回は横長の水槽を採用していたため、春の池の水辺を切り取ったような印象を目指しました。
満開の桜の下で魚たちが泳ぐ。
日本人が心のどこかに持っている原風景を表現したかったのです。
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造形美術としての見どころ
この作品には、私が長年大切にしてきた造形の考え方が詰まっています。
* 主役と脇役を明確にする
* 視線の流れを作る
* 高低差を利用する
* 余白を恐れない
* 自然界の不規則さを再現する
* 花だけでなく空気感まで表現する
特に自然物は左右対称に作ると不自然になります。
自然界に完全な左右対称は存在しません。
そのため枝の角度や花量もあえて不均一に配置し、「自然にそこに生えているように見えること」を最優先しました。
造花でありながら、本物の桜の景色を感じてもらうこと。
それがこの作品の最大のテーマでした。
この作品は、水槽とアーティフィシャルフラワーを融合させた空間演出として制作したものであり、来場者の皆様を最初に迎える「ウェルカム作品」として展示されました。
作品データ
作品名
チェリーブロッサム〜桜と生命が織りなす日本の春〜
制作日
2018年4月12日設営
展示期間
2018年4月14日〜15日
会場
タワーホール船堀(東京都江戸川区)
水槽内デザイン、流木の土台
東城久幸
アーティフィシャルフラワー造形
東城幸恵
テーマ
日本観賞魚フェア ウェルカム水槽
第36回 日本観賞魚フェアについて
2018年4月14日〜15日、東京都江戸川区のタワーホール船堀にて「第36回 日本観賞魚フェア」が開催されました。
日本全国から優秀な金魚や観賞魚が一堂に会する春の恒例イベントであり、多くの愛好家や来場者で賑わいました。
開催概要
* 開催期間:2018年4月14日(土)〜4月15日(日)
* 会場:タワーホール船堀 1階展示ホール(東京都江戸川区)
主な内容
第36回 全日本金魚品評会
全国から集まった数多くの金魚を対象に部門別審査が行われ、総合グランプリである農林水産大臣賞には4才の和金が選出されました。
観賞魚の展示・即売会
全国の著名養魚場による優秀魚の展示や、観賞魚愛好家向けの即売会が開催され、多くの来場者が日本の観賞魚文化の魅力に触れる機会となりました。
このウェルカム水槽は、その会場を訪れるすべての方を最初に迎える作品として制作され、入口で足を止めた人々が、満開の桜と水の景色を見て「春が来た」と感じてくださること。
それが、この作品に込めた私の願いでした。




























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